100万部のベストセラーとAmazonレビュー

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 先日、報道番組を見ていると100万部のベストセラーとして紹介されていたストレッチ本が気になって、Amazonで検索したら、レビューが凄いことになっていた。100万部のベストセラーでありながら、Amazonレビューの評価は★1つが、103件、★5つが、64件。250件のレビューの内、Amazonで購入したレビューは130件。

Amazonで購入していない本のレビューをわざわざAmazonにログインしてレビューするんだと、不思議な感覚を覚えながら、250件全てのレビューと、その中で紹介されていた動画、ホームページなどなどをチェックし、出版企画の裏側を勝手に妄想して見ました。

ビジネス本は賛否分かれて当たり前

 今回取り上げている本は、ストレッチ本ですが、この出版はビジネス戦略上の企画で出版されていると見ることができます。その理由は追々解説しますが、簡単に言えば「出版」といった露出方法を使って、認知度を上げブランディングを行い、本業の成果向上に努めるといった目的で出版がなされている。ということです。

多くの出版社では、このようなビジネス戦略上の出版を嫌う傾向にありますが、中にはそういった出版を得意としている出版社もあります。その違いは、出版社のホームページなどを見れば、どのような本を出版していて、どんな本を、どのようにPRしているかを見ていけば、その傾向はつかめると思います。

 なぜ、このような出版形態を嫌う出版社が多いかというと、このような出版企画だと売れるかどうかが微妙な本になることが多く、時にはキャッチーなタイトルや宣伝を行わなければならなくなってしまって、やもすると出版社のブランドを傷つけてしまいかねないからです。

しかし、今回はビジネス戦略上の出版に関しては定評のあるサンマーク出版さんから、この本が出されており、出版エージェントの介入も少し臭いましたが、著者のブログには、YouTube経由で出版社の担当さんから「本を出しませんか」とオファーを得たようなので、著者のブログにある通り、それまでの地道な努力が身を結んだ出版になっていると思います。

 ビジネス戦略上の出版の目的といえば、著者が本業としているビジネスの売上アップにつながるような書籍内容としプロモーションを行うこと。しかし、それだけでは出版社のリスクが高くなりますから、出版社も「売れる著者」でありながら、そのような企画を受け入れてくれる著者を探しているわけです。

そういった意味では、この本は大成功だと思います。

そして、ビジネス戦略上の出版で最大の目的となるのは、読者を顧客に変えること。もしくは、既存顧客のロイヤリティを向上させること。また、休眠客を呼び起こす作用を書籍がもたらすこと、この3つです。これを実現するために販売部数を伸ばすという戦略も取られます。

サンマーク出版は、そのホームページで自費出版も協力出版も行なっていないと明言しています(出版エージェントとの繋がりは持っている出版社さんです)。

 読者から顧客に変えることが目的ですので、本がひとつのフルイの役割を果たしているわけです。私も時折このような書籍企画で本を書きますが、要は、著者の主張を世に問うような時に、このような出版企画で本を構成します。

★1つのレビューが書かれようが、Amazonレビューの批判レビューばかりを見て本を買わない人は、鼻から著者は相手にしていないわけです。本を読んでくれて、本の内容や行間を読み著者の感性に触れた読者が、著者の顧客になることを望みますので、はっきりとその線引きができている書籍は、出版企画、書籍企画共に秀逸な本だと私は感じます。

こういった出版を行う場合には、出版社としても著者としても、より広く売って、分母を増やしその成果数を上げたいと考えるのが人情ではないでしょうか。

そうなると、キャッチーなタイトルとプロモーション、テレビの人気番組や顧客層が視聴している報道番組などで取り上げられるように仕向けた出版社のマーケティングには頭が下がる思いです。

YouTube→出版→ビジネス拡大の法則

 この著者のブログを拝見すると、今回の出版に至るまでに10年という実績を積む期間があり、YouTube動画をいくつも公開していることがわかります。Amazonのレビューには「YouTube動画の内容が本にされただけ」というような内容のレビューも多数見受けられ、「YouTube動画では解説しきれない内容が本には含まれているのでは?と期待したのに…」というレビューもあります。

読者満足度という観点からこの書籍を見た場合、平均値で見ても、中央値で見ても評価できるほどの読者満足度を得ているとは思えませんが、高評価を行なった読者の満足度は、それ以外の商品(DVDやサービス)にお金を落とす可能性はすごく高いように感じさせるレビューが多いですし、YouTube動画の再生回数を今後も引き上げてくれるコアなファンを獲得した出版企画だと思います。

出版社は「売れる著者」を探していますので、このYouTube再生回数が多ければ多いほど、出版社の目に留まりやすいともいえます。

 また、出版から本業サービスという動線だけではなく、YouTubeという広告収入につなげていることも戦略的にそうしているのか、たまたま世の中の流行りに合わせて実直に行なった結果、そういう流れができたのかはわかりませんが、噛み合っているのは事実です。

そういう意味でも、本書のAmazonレビューにもある通り、「実践すること」を第一に考えている著者さんの感覚が、そのまま編集にも落とし込まれているのではないかと感じます(これって、凄いこと。普通なら、編集者の思惑で修正される)。

ブログの更新は、月に1回か2回程度、アメブロで行なっているみたいですが、女性ビジネス特有の更新スタイルですので、コメントするほどではありませんが、100万部も売れてベストセラーになったから良いものの、書籍からの出口動線やWEBサイトから書籍に引き込んで、戻って来させるための動線に関しては、改善の余地が多い(この辺りは、ニュースレターでお伝えします。)





本体価格1300円の本が100万部ですので、著者印税率7%で計算しても9100万円をこの著者は手にしていますので、今後も様々なプロモーションにお金をかけることができそうですね。

10万部売れた頃から、その印税を露出アップのためにつぎ込めば更に販売部数を伸ばすこともできたでしょう。10万部入れた際の著者印税は910万円で、出版社にもこの2倍くらいのプロモーション予算は獲得できていると推測できます。合計すると3000万円くらいの予算を獲得できているわけです。当初10万部の著者印税を100%次回プロモーションにかけるというのはリスクが高い、出版社に残る社内利益をほぼほぼ次のポロモーションに回すのはリスクが高いと、半減させたとしても1500万円の予算があるわけですから、強いですよね。

これぞまさしく、「売れたものが更に売れる」という図式が成立していることを物語っています。Amazonレビューで★1つをつけた購入者さんには悪い気もしますが、著者も出版社も慈善事業で本を出しているのではないのですし、コアなファンを獲得するための出版ですから、一定数反発する読者が出ても仕方ないと言わざるを得ないかもしれません。

しかし、怖いのは次回作です。あまりにも酷評が多すぎる場合、次回作の売れ行きを前作のレビューが足を引っ張る可能性も否めません。そういった意味でも、チャレンジ精神旺盛な編集はギャンブル的な要素も多く、結果、これは読者離れ、読書離れを増長する1つの要因になってしまいます。

まぁ、業界の先行きや他者のことを考えながらぬるいビジネスをしていられるほど出版業界は安泰ではないですので、そんな甘いことは言ってられないのが現状ともいえますが…

酷評を減らす努力はできなかったのか

 この本の酷評における大部分は「カサ増し」という部分で、評価がかなり分かれるのが、そのカサ増しの大部分を占める「小説」部分。開脚ストレッチ本に「小説」が必要なのかはさておき、この小説部分が、顧客のふるい落とし役を担っているのは事実のようなので、まずは、それ以外での改善部分を見ていきたいと思う。

本書の前半部分は、4週間で開脚ができるようになる「ストレッチの方法」と日々ストレッチを実施しながら本書を広げて確認できる構成になっています。

ただ、その後の唐突に小説が始まり、184ページの大部分をこの小説がしめるために酷評につながっていると言わざるを得ません。

ストレットをしながら本書を確認できるように「綴じ方」まで工夫しているのなら、書籍内でその構成パートを明確に分割し、実践パートとその実践がどのように体に作用して、成果につながるのかを解説したパート。そして、開脚ストーリーの3本仕立てで構成すれば、まだ、小説の内容に関しても素直に呼んでくれた読者が増えたのではないかと考えます(「100万部売ったことがないお前に言われたくない!」というのは、無視します(笑))。

 小説部分のレビューにもある通り「開脚ができなくて他の何ができるか!」という内容の小説には、「極端すぎる」というレビューは妥当だと思います。そもそも、ここまで極端な読者のフルイ分けをしなければならない、本サービスというものがどんなものなのかが気になります。(逆に「開脚ができたからと言って、何ができるんだ?」開脚ができたら100万部売れるのなら、開脚をもっと頑張る人も増えるでしょうが)

体の柔軟性に関する専門家ちっくなレビューもありましたが、能書きで開脚ができるわけではなく、実践した人が、達成するまでのスピードや期間にこそ差はあれ、実践したことで成果を手にするのが体の仕組み。もちろん、間違った実践では故障の原因にもなりかねませんので、そのあたりの注釈をくわえながら、書籍からYouTubeに引き込んだり、Facebookに読者限定グループを作るなどをして、実践中に腰が痛くなった人が「やり方が間違っていますか?」という疑問に答えれば、次回作の構想も練りやすく、次の本も売りやすくなるのではないかと思います。

 小説部分はモチベーションアップにつながるというレビューや、啓発的な意味合いが大きいというようなレビューもありますので、心と体のストレッチというようなテーマで、次回は小説メインで本を出して見ても良いでしょうし、小説作家としての夢もお持ちなら、そのような小説を出版し、読者限定プレゼントで、ストレッチをしながら見ることもできる、解説パンフレットのような小冊子をプレゼントしても良いと思う。

そうすれば、読者リストの内容も充実するはずなので、次の商品をプロモーションする際にも、またサービスをプロモーションする際の参考データとしても使えるので、有意義な出版となったのではないでしょうか。

Amazonレビューには、酷評のマイナス評価を是正するために「さくら?」と思わせるようなレビュー(他の商品に対してレビューを行なっていない。複数のレビューはあるが、レビュービが均衡しているなど)があるが、その真相を突き止めることはできないが、あまりそのようなステマ的な行為は避けたほうが良いのはいうまでもありません。

 ビジネス書の場合は、ある程度の酷評は覚悟の上で、また、売れれば売れるほどその数も増えることは覚悟しておいた方が良いと思います。(100万部売れた本で250程度のレビューですし、100数件の酷評ですので、0.01%程度)「万人に受ける本」ましてや、わざわざAmazonにレビューを書くような人たち(私も書きますが)のように、意見表明が好きな人たちから賞賛ばかりを得る本の方が怪しさが前面に出るわけです。

そういった意味でも星の数は少なくても、レビューの内容に気分を害するような単語が含まれないような努力は編集人の務めだと私は思います。

 私の拙著にも酷評をいただいてる書籍はありますが、そのレビューがついた後にもご購入者が衰えていないのが現実ですし、読者プレゼントを申請してくれる方も右肩上がりに増えていますので、酷評を恐れて無難な本に仕上げるのは、残念な結果になるでしょうが、ビジネス本を出版するのなら、購入検討者が気分を害するような言葉が含まれるようなレビューにならないように客観的な視点で、本を構成し編集することが必要なのではと私は考えます。





本が売れてビジネスはうまく言ってる?(勝手な妄想)

 この著者が運営しているWEBサイトを少し過去に遡ってチェックしてみましたが、この本が25万部売れた後に大幅リニューアルがされているようです。それ以前のホームページはきっとお友達が無料で作ってくれたようなホームページでした。25万部も売れたんだから、それなりの著者印税も入ったので、ホームページでも綺麗にしようといったところでしょうか。

残念なことに、それ以前のホームページを見ると、定期講座は毎日行なっていたようですが、今のホームページには、そのような定期講座のスケジュールは掲載されていないため、事業自体の頭打ちを感じていたのかもしれません。

継続して行なっているのなら、再掲載することをお勧めしますし、打ち切りになっているのなら、本が売れたことを引っさげて、もう一度売り込みに行くべきです。そうすれば、インストラクターさんの収入にもなりますし、インストラクター養成講座の受注も増えるはず。

YouTubeは2年も前からアップされているようですので、何か現状を打破するきっかけが欲しかったとも感じます。

商業出版を実現する前には、電子書籍も出されており、出版への意気込みがこの時から感じられますが、電子書籍を出版するにあたって講座にも参加されているようですが、電子書籍だけでは本業の改善は見られなかったわけです。そう考えると、「やっぱり、本が売れなきゃビジネスには繋がらないか〜」と落胆しそうですが、本が売れた今、彼女の本業が上向いているかどうかといえば、インターネット上で調べる限り「…」です。

確かにテレビへの出演や公園の依頼は増えているかもしれません。

 しかし、それが本業?と聞かれれば、彼女はきっと違うと答えるでしょう。新しくなったWEBサイトには定期講座のスケジュールが掲載されていないことからも、閉鎖されたのか教え子さんに全てを譲ったのかは定かではありませんが(譲ってあげたのなら、広告塔として宣伝してあげるべき!)、出張ヨガスクールに関しても2014年以降、ホームページが2016年にリニューアルされているのに掲載がないことも悲しい現実と見るしかないように思えます。

 確かにテレビに出たり講演の依頼が増えると嬉しくなってしまいますし、自分があたかも有名人になったかのような錯覚を覚えます。

しかし、それが次につながるビジネスになっているかどうかは、別問題なのです。出版以降も彼女は実際には、多くの生徒さんやインストラクター希望のお弟子さん達で溢れ、大好きなヨガにどっぷり浸かった毎日を過ごしていて、サイトを更新する時間がないのなら、出版は大成功だったでしょう。

しかし、出版を通じて新たなお仕事が増えてしまったばかりに、そもそものそのお仕事を志した思いが、薄れてしまっているのなら、私は残念に思います。稼がなければビジネスを継続することはできません。そのため商品を増やしたり出版やDVD、広告収入を得るYouTubeなどを活用しながら、収益の流れを増やすことはとても良いことだと思います。

そうは言っても、やはりこれらはネットを使って売っているのですから、継続的な顧客獲得を願うのなら、WEBサイトが更新されていて然りだと思います。

結論から言って、100万部の著者印税が9100万円も手にはいれば、事業形態をモデルチェンジしても間違いではなさそうなので、今後の活躍が楽しみです。でも、これが10万部で終わっていたらと考えるとゾッとしますし、それ以下だったとしたら、たとえ商業出版だったとしても、何のために出版したのかわからないとなっていたかもしれません。

出版企画、書籍企画共にAmazonレビューを見る限り成功している事例だとは感じますが、その読者を顧客に導くための動線が、本を出版する前に企画すらできていなかったことを残念い思います。

もちろん、本が売れる前から準備する必要はありません。今回のケースでは、唯一本が売れて次につながったものといえば、この著者の場合はYouTubeの再生回数が250万回から500万回になったくらいしか、ネット上では見当たりませんので、残念な気がしてなりません。

それもご自身のチャンネルではなさそうですので、いいように使われているだけのような感が否めないのもかわいそうなくらいです(実はこういう専門家さんがたくさんいます。あなたはその一人にならないようにね!)。

この事例から見ても、本を売るためには、批判を気にしないキャッチフレーズで売り上げを伸ばすこともできますし、売れ行きに合わせてそこで得られた資金を再投入して、さらなる売り上げを獲得するかしないかで、大きく変わってくるともいえます。しかし、本が売れたからと言って、必ず本業が上向きになるとは限らないということも、この事例からわかること。

結果、読者ターゲットは絞っていたつもりが、それはミスマッチだったと言わざるを得ません。

ストレッチの中から開脚に絞るというコンセプトは良かったのでしょうが「出口」が定まっていなかったわけですね。出版社は丸儲けですし、ヒットメーカーという位置付けに対してさらなる実績を積んだのは事実です。ですが、あなたは出版社を儲からせたいから出版するわけではありませんよね。

出版を検討する場合は、商業出版、自費出版の別を問わず、あなた自身の出版の目的と「出口」を出版社と協議しながら進めて言ってください。