本日は、2017年2月24日金曜日です
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キンコン西野 自腹

キングコング西野の実績は、本当に出版業界に衝撃を与えるのか

 昼食の時にバイキングをつけたら「キングコング 西野 自腹で2435万1138円使って自分の絵本を1万部買い取っていた」と言うニュースを耳にしました。
キングコング 西野さんのブログでソース元はこちら

まぁこうやって批判?記事を書くと微力ながら売り上げにも繋がるんだろうなと思いながら記事を書いている訳なんだけど、批判するのはキングコング西野さんの行動ではなく、バイキングのヘタレコメンテーターどもで、通称「各界の専門家」たちなので悪しからず。

キングコング 西野の自腹行為は多かれ少なかれ昔からあること

 キングコングの西野さんがやった自腹行為は多かれ少なかれ昔からあることで、初版買取なんて毎日200種類の新刊が出てるんだから少なく見積もっても5%くらいはやってるんじゃないかと思う。この「1日200種類の新刊」には、自費出版も含まれているので5%と言う数字も適当ですが、身銭切って「重版ブランド」を買い取っているケースは、もっとあると想像できる。

だから、読者離れが進んでいるんだよ!

そもそも、初版の発行部数に決まりなんかない訳で、初版20部でも重版かかれば「二刷、三刷」って奥付きに記載される訳です。ただ、この「奥付」みて本を買う人がいるのかとも正直思う。そして、先に言っておきますがキングコングの西野さんは重版ブランド目当てで1万部を買い取った訳じゃないので、その辺りは昔からやられている初版買取とはわけが違うのです。

と言うことで、まずはキングコング西野さんがやった凄いこととフジTVのバイキングで話していた「出版業界を変える」などなど、その他、専門家さんたちのくだらないコメントについて解説しておきますね。

ちなみに、キングコング西野さんが「出版業界を変える」的な発言の意図はエントリーの最後に

キングコングの西野さんがやっていることは、マーケター系ビジネス書著者はみんなやっている

 キングコングの西野さんが「やっていること」は、すでにマーケター系でビジネス書を何冊も出している著者なら、昔からやっていることです。ただ、昔からやっていることというのは、自著を自分で買って…というくだりではなく、自販サイトを作成したり、メルマガやブログで新刊の予告や執筆過程を発信し(これをローンチという)、新刊への期待値を高めて予約を受け付けるという「プロダクトローンチ」という手法です。

どうやら、プロダクトローンチという手法は、動画ローンチのことを指すと勘違いしているコンサルタントも少なくないみたいだから痛いんだけど、これ2つの単語がくっついてできただけ。「プロダクト(Product)」を「ローンチ(launch)」するから「プロダクト。ローンチ」なんですね。この「launch」ですが、日本語としては「打ち上げる」という意味があります。ですから直訳すると「製品を打ち上げる」となりますので「販売開始」や「新商品のスタートダッシュ」なんてニュアンスで捉えている人もいるみたいですが、単純に「プロモーション」の一種です。(下準備は大変ですけどね(汗))

 キンコン西野さんは、これで4作目か5作目の絵本ですよね。元々の資金はクラウドファンディングで集めたそうで、今では35人の協力者と一緒に絵本を1年以上かけて製作しているそうです。

初めからキンコン西野さんにローンチの知識があったのかどうかは知りませんが、結果的に前作までが一桁万部くらいの売れ行きで、今回が現在23万部ですので、前作も今回の作品にしてみればローンチになっていたと考えることができます。

Amazonでキングコング西野さんの絵本『えんとつ町のプペル』を調べてみると2160円でした。これは税込価格だから、本体価格は2000円。23万部売れているということで、印税を10%と仮定すると、4600万円が入る計算になる。

バイキングでは自腹の費用を「19歳から働いているので」と苦労人ぶってはいたが、前作までの販売部数を足しても確か20万部くらいにはなっているので、初版買取に必要だった2500万円くらいの資金は、メンバーで出し合えば不可能な金額でもない。(その証拠に「今回の儲けで何するの?」と聞かれて「次回作に突っ込みます」って答えていました)もちろん、この資金は(これまたテレビでも言っていたが)絵本の売り上げからのプール金だけではなく、個展やそのほかのイベント、本業などで稼いだ資金が合わさってのこと。

すでに、1万件の予約が入っていることから、実際の購入が7割だったとしても、2000円x7000部で1440万程度の売り上げは回収できると計算できますし、初版を1万部から3万部に上げることで、初版印税の600万円が現金として手に入ることは約束されているわけです。

こう考えると、予約リストを出版元となっている幻冬社に見せれば、初回1万部という予定も3万部に引き上げることができるわけです。「初版1万部」との話の中で、その1万部を西野さんが買い取るといっているので、「じゃぁ初版2万部にしましょう」というセコい話にはならないでしょう。人というのは、こういう時には「1、3、5、(8)、10」と刻むものです。

こうなると、1万部を買い取るには資金が税込2160万円必要ですので、そこから600万円を差し引いた1560万円を捻出すればよくなる計算になります。

協力者が35人ということなので、一人頭45万円弱の手出しになったとしても、それほど痛い金額でもないでしょう。何せ過去の絵本からの売り上げが仮に合計20万部だったと仮定し、(これまでの絵本の本体価格は1100円〜2500円とバラツキがある)1冊の本体価格を1500円とすると印税収入は3000万円。これを35人で割ると一人860万円くらいの収入は得ているだろうからです。過去利益の5%くらい、次の売り上げのために投資しなくては、何も得られませんからね。

これは全て「キンコン西野作」という名前で得た収入ということです(もちろん、初めから35人じゃなかったはずだから、初期メンバーはもっともらっているかも)。これが無名の作家なら取り上げられるのは、バイキングではなくて、アンビリーバボーになるでしょう(笑)もっとも、20万部程度でアンビリーバボーが取り上げるかどうかは謎ですが。

ちなみに、キンコン西野氏の絵本は、宝島社や主婦の友社からも出ていますが、ほとんどが幻冬社から出ています。幻冬社といえば、あの凄腕社長が有名だけど、自費出版支援にも力を入れている出版社で、2009年にはよしもとクリエイティブエイジェンシーとの共同事業を立ち上げるなどして、タレント本にも力を入れている出版社。

もちろん、販促力のある幻冬社とローンチの技術を使ったとしても、才能がなければ絵本なんて売れません。このマーケティング・フォーマットの上に西野氏をはじめとする協力メンバーの才能があってからこそ実現できたシナリオなので、やはり「凄い!」ということには変わりません。(でも、応用は可能ですし、実践者もいますよ〜)

ただ、やったことといえば、ビジネスにおいて王道のことをやったまでであって、驚くべきことじゃない。驚かすような報道に仕上げることができたのは、あくまでも西野氏が「嫌われキャラ」のコメディアンだったからで、これが、スーパーのレジ打ち主婦なら、一発報道で話題にもならなかったでしょう。

もちろん、主婦が10年かけて累計40万部の絵本を売った!というニュースは驚きだし、凄いことだと思うけど、波紋は呼ばない。失礼かもしれないですが、以前、直木賞か芥川賞を受賞した、コンビニ店員の名前や小説のタイトル、どのコンビニに勤めていたかなどを言える人がどれだけいるでしょうか。

加えて、ある著者さんで出版エージェントのサポートを受けながらも翻訳本なんかも出て230万部以上売れている本があるって知っていますか?

はい、すぐに本の名前が出た人は、読書家さんですね。それもかなりの冊数を読まれる読書家さんではないでしょうか。一般の人は誰も知りません。

ちなみに、キンコン西野氏の最新絵本がこちら

今後どこまで部数を伸ばすのですかね!100万部を超えるのも、絵本なので翻訳作業に手間がかからないので伸びそうな気がしますが…。

コンビニ店員の小説はこちら

※芥川賞受賞作品です

バイキングの取材もローンチのひとコマ

 そういうことで、バイキングの取材もローンチの一コマだったということがわかります。近年詳しい人ならご存知かもしれませんが、プロダクト・ローンチはネットでするものと思い込まれていますが、別に紙のDMでもできますし、テレビを使ってもできます。新作の映画なんかは、過去の作品をテレビで流したりしますよね。これもローンチの一種です。

使える媒体とローンチする商品をマッチさせ、最大限にローンチするのがプロダクトローンチを成功させる決め手です。

キングコングの西野氏は「お笑い」というシーンで、ファンを集め、「嫌われ役」を演じることで、ファンロイヤリティを高めて、「予約購買の精度を上げた」とも考えられます(意図的ではないでしょうけどね)。

そして、不特定多数が視聴するテレビを使って、既存ファンにいつもの「キンコン西野」を報告し、また、話題性のある、もしくは炎上したり波紋を呼ぶような出演の仕方を行なって、新たなファン層を取り込み、再び自炊した販売サイトやアマゾンの販売ページへのトラフィックを獲得して、検索エンジンにも好まれるコンテンツへと仕上げたわけです。

 事実、狙ってそう易々とできるものではないかもしれませんが、テレビタレントという属性と、よしもと&幻冬社が組めばできなくもないんじゃないかと思います。

出版業界を変える気なんてないと言い切れる理由

 キンコン西野氏は、テレビの取材に対して「出版業会を変える」なんて言っていますが、既に出版業界は変わり始めていて、「本は著者が売るもの」という考え方は、著者の間では数年前から浸透しています。知らないのは読者と本を読まない人だけ。

もちろん、絵本や小説といった「作品」と呼ばれるものは別にして、ビジネス書なんかでは当たり前に著者がアマゾンキャンペーンをやったり、書店営業をしたり、SNSを使って平積み写真を投稿したり涙ぐましい努力をされています。初版を買い取ることも珍しくないですし、初版1000部をすぐに買い取るからすぐに2刷を1000部行なって「刷数」を増やすなんてことも行われていたりします。

これは、書籍の世界だけでなく物販も同じ。

「たくさん売れたものが良いもの」と評価される風潮が続く以上、こういったプロモーションはなくなることはないでしょう。

 キンコン西野氏の「出版業界の古き風習を変える」的な発言やバイキングのタレント専門家たちが、それを煽るかのようなコメントをしていましたが、ここまでを読んでも分かる通り、キンコン西野氏は出版業界を変える気なんてサラサラありません。それ以前に出版業界はすでに旧態依然のままでは潰れるのは時間の問題だと危機を感じ、それぞれの思惑で改善と変化を試みています。

ある経済評論タレント専門家が「キンコン西野のような作家が増えれば出版社入らなくなりますからね」と発言していましたが、増えたところでなくなりません。ただ、本の売り方が変わるだけで、本の買い方も変わるだけです。絵本や小説といった「作品」と呼ばれる書籍だけではなく、ビジネス書の世界でも「出版社」の立ち位置が変化したり、出版社の使い方が変わるだけです。

現に、キンコン西野氏が出版業界を変える気があるのなら、いくら先駆的な幻冬社と組んでいるとはいっても、自分で出版社を立ち上げたことでしょう。

では、それをなぜしないのか…

その理由は、キンコン西野氏自身が、「餅は餅屋」ということを知っているからです。

冒頭の印税試算でも分かる通り、35人のメンバーで1年半ほどかけて得られる印税が均等配分すると131万円しかないわけです。こんな収入で誰が食べていけるでしょうか。もちろん、出版社となれば、この印税の他に出版社手数料が入りますので、印刷・製本を外注化したとして、出版社を立ち上げて自社で絵本を取次に回し販売したとしても、半分が会社に残って9200万円。ここから法人税等引かれて7割残って6440万円。それを35人で分配すると184万円。

 この35人はあくまでも絵本制作スタッフですので、出版社を立ち上げるとなると、それ以外のメンバーも数人必要になってくるでしょう。どう考えても年収150万円程度の社員ばかりがいる会社で出版業界を変えられるはずがありません。

ちょっと古いデータですが、2012年の出版社売り上げランキングは帝国データバンク調べにおいて1位が1260億超の集英社です。10位の「ぎょうせい」でも216億円の売り上げです。3年で2冊しか絵本を作れない出版社が仮に1作品50万部売れたとしても3年で20億、年間7億弱という計算になります。

この程度の売り上げで、なぜ、出版業界が変わらなければならないのかが不思議でありません。

個人的には「出版業界にはどうかこのままでいてください。」とお願いしたいくらいです。大きな出版社が潰れて小さな出版社が今以上に増えれば、自ずと私がやっているような発想に行き着く人も出てくるので、困ります(笑)

「私がやっていることを邪魔しないでねm(_ _)m」といったところです。せっかく大手が参入する必要がない市場を開拓したのですから、試しに入ってこられて引っ搔き回されるのもごめんです。まぁ大手どころか通常の出版業界の人たちにとっては、何の旨味も感じられない市場に私はいるので心配はしていませんが、企業体が小さくなれば視野が広まる人も増えるので…それはそれで面白くなるとは思いますが…

余談はさておき、結果、キンコン西野氏の発言は、絵本の販売部数を伸ばすための、そして次回作「時計台」のローンチにつなげるための布石だったわけです。出演者もそれを台本で踏まえての発言だったんでしょうね。

結果、「たくさん売れたものが良いもの」と評価される風潮を支えるだけで、今後も読書離れは進むでしょう。もちろん、読書離れが進むので、それを見越して読者を開拓すれば著者としてのブランドも確立できますし、読者も獲得できるわけです。

そうなれば、何のために読者を獲得するのか!ということですね。

例えば、キンコン西野氏なら、それは、個展やイベントへの集客を確実なものとするためかもしれませんし、インパクトのあるニュースを生んで、露出を増やすためかもしれません。

 今の時代、露出を増やすことができればサイトやブログに誘導して(こちらから誘導しなくても、検索して行き着く人もいれば、このエントリーのようなものから行き着く人もいる)、そこから色々なサービスや商品などにマネタイズすることは、それほど難しいことではありません。きっと今後はキンコン西野氏のブログのトラフィック数も伸びることでしょうから、過去記事の中からバズった記事などをまとめた本が出るかもしれませんね。原稿はブログの中にありますし、実績があるので、編集作業は出版社がやることでしょう。そうすれば、過去の試算で言うなれば「不労所得」としての収入をキングコング西野さんは得られるというわけです。

応用するための準備として

 最後に、「キンコン西野氏が実践したローンチを応用することはできないか!」を考えてみましょう。バイキングの番組の中では「お金があったから」とまた嫌われ口を叩いていましたが、2000万円もの大金をつぎ込まなくても応用は可能です。それよりも必要なのは、キングコング西野の絵本に変わるあなたの「プロダクト」です。

「キングコング西野の絵本に変わる製品なんてウチにはないよ」そんな謙遜された声が聞こえそうですが、これまで累計20万個以上販売された商品といったら「それならいくつもあるよ!」と答える声が増えそうですね。

さらに累計4000万円以上売り上げた商品は?とすれば、もっと声が集まりそうです。

あなたがローンチするための商品は、このような製品の中に隠れています。

間違っても、累計20万個売れた商品や総額4000万円以上の売り上げを上げた商品をローンチしてはダメですよ。

じっくり考えてみてくださいね!

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