演劇の演出と広告

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川上音二郎

 先日、11月の連休に講演になる演劇の稽古場にお邪魔させて頂きました。

お話を聞くと、座長さんのお師匠様は京唄子さんだそうで、僕自身、そんな劇団の稽古場にお邪魔できるなんて嬉しくてたまりませんでした。

 代表の方に促されるまま、ご紹介して頂いたのですが、放送作家の先生までいて、ご縁とは本当に不思議なものです。

約3時間ほど稽古の様子と演出の様子を拝見させて頂いたのですが、これが非常にビジネスにも通じるところがあって面白いんです。

演劇は、お客さんに向かってお芝居をしなければなりませんので、動き方や歩幅ひとつでそのシーンから伝わるイメージが大きく異なります。

ましてやこの日は「稽古」。セットなんてありませんし、衣装も着ていません。直線的に動くのか、少し弧を描きながら相手役に近づいていくのか…

セリフを話しながら歩くのか、移動して立ち止まり、向きを変えて話すのか…

こう言った組み合わせの違いだけでも、見ている側にとっては、伝わり方が大きく違います。普段はテレビドラマしか見ていないので(テレビドラマも余り視ませんが)、こういった演出のBefore Afterを視るような機会はありません。

 言い換えれば、私たちは常に「完成されたもの」を見せられているのではないかと感じたわけです。これは、当たり前のことですが、自社の試行錯誤を視ることはできても他者の試行錯誤を視ることはまずできません。

たとえ、その試行錯誤の過程を観ることが出来たとしても「なぜ、その施行を行ったのか」といった背景までを知ることはできません。完成したもの、成功したものを真似ても結果が出せない理由がここにあるのではないでしょうか。

 最近「広告の反応率が下がった」や「広告寿命が短くなった」という話しを聞きますが、それはいったい自社のことなのか、それとも本やネットで見聞きした情報なのかが大切です。

 妙な話しですが、近年電子書籍に注目が集まっていたりしますので、営業に出かけたときなんかは、凄く食いつきが良いです(笑)しかし、「電子書籍だけじゃダメですよ、紙の本も出さなきゃ」と話しを進めると10人中8人が怪訝な顔をします。

 その理由は、今の時代「紙の本を読む人なんているのか?」と報道されている情報を鵜呑みにして「これからは電子書籍の時代だから、電子書籍だけで良い!」とおっしゃられます。

 もちろん、電子書籍と紙本を使った販促や集客、自社プロモーションを行っている企業は今のところほとんどないのですが、この10人中8人の方に「あなたは電子書籍を付きに何冊読みますか?」とお伺いすると、ほとんどの方が 過去に1、2冊買ったことがあるだけだと答えます。

読み終えたのかと聞くと、読み終えていません。

では、紙の本や紙に印刷された文字を読む機会は?とお伺いすると、ほとんどの方が毎日のように新聞を読み、月に1、2冊か、2~3ヶ月に1冊ペースで紙の本を読んでいるようですし、出張の時には、必ずと言っていいほど、紙の本や雑誌を鞄に忍ばせ、新幹線や飛行機の中で「読書」をしていると答えられました。

更に質問を続け、

「あなたは、電子書籍と紙の本、貰って嬉しいのはどちらですか?」と聞くと、10人中10人が紙の本と答えますし、「電子書籍をどうやってもらうの?」と質問を返す人もいます。

 少し脱線してしまいましたが、演劇は演出の裏側やBefore Afterを見ると、最終的な演出で展開されるそのドラマをよりいっそう楽しむことができます。なかなかそう言った機会には恵まれませんが、ビジネスの場合はどうでしょう。

 あなたの顧客に、あなたが商品開発をした裏話やBefore Afterを体験してもらえれば、より一層あなたが手がける商品やサービスの良さを実感して頂けるのではないでしょうか。

 広告も同じです。

ウェブのリスティング広告も紙広告もBefore Afterを見ずにただのマネをしたところで成果は見込めません。成功した広告を真似るのは必須ですが、なぜ成功したのかの仮説を立て、そこからBefore Afterといった演出を加えてみてください。