脱USP

92
USP

USP、あなたも1度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。

USP、それは「Unique Selling Proposition」の頭文字をとってできた言葉で、国内では「独自のウリ」なんて訳されます。

このUSPという言葉は、1940年代だったかと記憶していますがロッサー・リーブスによって提唱された言葉なのですが、国内ではジェイ・エイブラハムやダン・ケネディによって広められたようです。

私も初めてこの言葉を知ったのは、この2人のどちらかだったかと思いますが、USPの父ロッサー・リーブスの著書には、USPをこのように解説してあります。


  1. 広告は顧客への提案でなければならない:単なる言葉の羅列や宣伝文句ではなく「この商品を買えば、こういう利益を手にする」と伝えるべきだ。
  2. その提案は独自のものであること:競合が同じ提案をできない、あるいはしないもの。
  3. 提案は強力であること:大衆を動かす力がある提案をする。

私がはじめてこのUSPを知るキッカケになったのはドミノピザのUSPで、USP作成のお手伝いをはじめさせていただいたのは2010年頃でした。

ブラインドディスカッションと言う手法を使って、約6時間ほど経営者とマンツーマンでこの会社のUSPを組み立てました。

そんな私がなぜ「脱USP」と言うタイトルで記事を書いているかと言うと、冒頭の画像の通り現在見かけるUSPのほとんどが「ウサンクサイ・セールス・ポイントに成り下がっているからです。

胡散臭い・セールス・ポイントに成り下がっているUSPの特徴は「差別化」を意識し過ぎていて大袈裟だったり「Proposition」(命題・定理・提案)という意味を反映していないと言ったところです。

大成功を収めたUSPの例として上げられるのは、私も影響を受けたドミノピザのUSPですが、一般的な解釈と成果に繋がるUSPの解釈では大きな違いがありますので、その点に関して本コラムで解説したいと思います。

2つのUSPの違い「胡散臭い・セールス・ポイント」と「独自の販売命題」の違い

USPを直訳すると「独自の販売命題」

USPの和訳は多くの場合「独自のウリ」と訳されているようです。簡単な表現にすることは大切なのですが、時としてそう言った場合には重要な箇所が抜け落ちてしまいます。

USPの場合は「Proposition」の直訳「命題・定理・提案」という意味が抜け落ちてしまっています。

「独自のウリ」という意訳は「Unique Selling Point」になってしまっていて「独自の」「セールスポイント=ウリ」になっているのがこれで分かります。

更に「独自の」という言葉が昔から言われている「競合との差別化」との錯覚がおき、結局その差別化が明確でないために「自画自賛」や「証明できない誇張」「検証のない主張」となり『胡散臭い』ものになってしまっています。

反対に適切な直訳を用いると見えてくるものがあります。

USPのUは「Unique」。「Unique」の直訳には「唯一」「またと無い」「ほかにない」などの訳が並びます。ちょっと直訳ではありませんが日本語で「ユニーク」と聞けば「面白い」と感じる日本語としてもなじみ深い言葉だと私は感じます。

そして、優秀なUSPというのは、とても「面白い発想」を伴っていることから、私はこの感覚は重要だと考えています。

今の世の中「唯一無二」の状態を作り出すことは、そんなに簡単ではありませんが、いくつもの「面白い発想」を掛け合わせると意外と簡単に「唯一無二」を生み出すことができます。

例えば「訪問販売のノウハウを活かしたSEOで通販サイトのアクセスアップを支援します」というのは訪問販売に悪いイメージを持っている「購買層」には受けが悪いでしょうが、営業部隊を持っている企業がSEOを取り入れたいと考えていたりすると、とても歓迎される特徴だったりします。

また「データバレーの黎明期を支えたアナリストがサポートするウェブ戦略で、御社の売上を2倍にします」というのも、昨今の女子バレーボールをご存知の方ならデータバレーを駆使して数十年ぶりのメダル奪還を果たしたデータバレーの存在を少しくらいはご存知でしょうから、そこからイメージも広がることでしょう。(ちょっとニッチ過ぎますか?(笑)2015年8月22日から開幕するので応援よろしくお願いします。監督をされている真鍋さんは私の入団2年目からプレイング・マネージャーでした。当時のデータバレー以上のデータが真鍋さんの頭の中にはあったようですが…)

ただ、この2つ、意外性やユニークさはあるのですが、実は非常に弱いUSPといえます。

その理由として第1に挙げられるのは「me」で始まっていること。

「(販売者の)私は●●」という文章ですよね。これは弱い、非常に弱い。

USPも「You」(あなたに)ではじめると強くなります。

USPが語られる際によく言われる「ベネフィット」や「顧客メリット」はなんとなく含まれていますが「販売命題」には繋がっていませんよね。

では、この「販売命題」をも見事に繁栄した「ドミノピザ」のUSPを見ていきましょう。

ドミノピザのUSPが成功した理由

ドミノピザのUSP原文は次の通りです。

Fresh Hot Pizza Delivered To Your Door In Under 30 Minutes Or Its Free! Guaranteed

直訳すると「出来立て熱々のピザを30分以内に届けます。できなければ無料にする保証付き」

このUSPの前に「あなたに」と入れても違和感なく伝わります。

しかし、これを何を思ったのか「Fresh」を「新鮮」と訳してしまい「新鮮で熱々のピザ」を勝手に想像して「熱々でおいしいピザ」と訳している残念な方が多いので、このドミノピザUSPは間違った解釈で広まっています。

「新鮮で熱々のピザ」…なんて意味不明な言葉でしょうか。「熱々のピザ」と「Fresh」をあわせるのなら「出来立て」「ほやほや」という訳を用いるべきでしょう。(Google翻訳参照)

ドミノピザのUSPが秀逸な点は第1に「美味しさ」を訴求せずに成功しているところです。

第2に「30分以内に届ける」ことで顧客が得られるベネフィットを明言せずに想像させているところです。

面倒な夕食の準備や後片付けの手間もなく、電話1本。それが30分後にはかなうと言っているのですから世のママさんには大助かりです。

それを無料保証で力強く約束している。

ここまでの解説は少し調べたり、USPを理解されているコンサルタントさんの話などを聞けば知ることのできる要素なのですが、これだけでは、まだ「命題・定理・提案」に触れていないことにお気づきでしょう。

国内で見かけるUSPのほとんどで抜け落ちている重要なポイント

「Proposition」この英単語の直訳は「提案」「命題」「定理」などと訳されます。

「販売提案」「販売命題」「販売定理」とすると、1番初めの「販売提案」というのはなんとなく理解できそうですが、残り2つはあまりよく分からないと言うのが率直な感想だと思います。

しかし「販売提案」と訳してしまうと顧客にあわせて都度都度変化しそうなものと感じてしまい「命題」や「定理」とはかけ離れる感がないでしょうか。

そこで、私はこの3つの和訳から「約束し続ける顧客への提案」と解釈してみました。するとドミノピザのUSPに隠れた、もっとも重要なポイントが見えてきたのです。

それは、ドミノピザはこのUSPを貫くために自社がどのように発展すべきかということまでも含んでいるということです。

ピザを焼き上げ「30分以内に届ける」ためにはより多くの店舗が必要ですし、エリア内の顧客を増やすことが社内の第1目標であることが見て取れます。

万が一30分の配達エリア外からの注文がなされた場合のオペレーションも充実させなければならないことも裏付けられています。

更に調理時間の短縮も企業課題だと言えるでしょう。

結局ドミノピザはこのUSPを貫くために事故の問題などを起こし「30分以内の保証」はなくなったようですが、今日ピザの宅配では注文の電話を受けている最中から調理にかかり、配達の最短ルートを割り出すようになっています。

このように成功するUSPというのは、顧客へ約束すると同時に自社の課題も明確にする働きがあります。この『自社の課題を明確にする』と言うポイントが含まれないUSPのほとんどが「胡散臭い・セールス・ポイント」なのです。

どうですか?思い出してみてください。

先程、私を例にとった2つのUSP。

「訪問販売のノウハウを活かしたSEOで通販サイトのアクセスアップを支援します」
「データバレーの黎明期を支えたアナリストがサポートするウェブ戦略で、御社の売上を2倍にします」

胡散臭いでしょう(笑)

では、どうやって適切なUSPを確立するのか…

(改訂版書籍が近日発売)